鰹のような赤身の魚を鰹節と同様に加工するれば、様々な節類が出来上がります。まぐろ、宗田鰹、鯖、あじ、鰯が節に加工され流通しています。変わったところでは、鯛から作った鯛節、鮭から作った鮭節、サンマから作るサンマ節等々、があるのですが、それらは製造されているとは言えないような状況です。ここでは、まぐろ節からいわし節までの説明をしましょう。
1.まぐろ節
キハダまぐろの幼魚を原魚に製造されています。関東では「めじ節」、関西では「しび節」と呼ばれています。南方一本釣りまたは巻き網で漁獲されたキハダまぐろ(要するに凍結状態で日本まで運ばれたまぐろです)が原魚になっています。鰹節のように荒節、かび荒、荒仕上節、仕上節の製造が可能ですが、製造されているまぐろ節の99%は荒節です。ちなみに弊店ではまぐろの仕上節を必要とする飲食店さんがいるので、注文生産と言う形でまぐろ本節を年間で500Kg位仕入れている状態で、ある意味ではまぐろ本節は大変稀少な存在です。まぐろ節は鰹節よりも味があっさりとしており、癖のない上品な味わいをもっています。まぐろ節は中京地区、関西地区で主に消費されています。まぐろ節の血合い部分を取り除いた節(血合抜と呼んでいます)は、より癖がなく、透明なだしがでるので、関東地区の飲食店さんも多々使用しています。まぐろ節の血合抜は吸い物のだしや極力だしの味が他の素材の持ち味を邪魔することを避けたいときに使われています。また、糸状に削られ(糸がきと呼んでいます)、多数の飲食店で使われています。
2.宗田節
宗田鰹でも「丸宗田」を原魚に製造されています。「目近(めじか)節」とも呼ばれています。主な生産地は高知県土佐清水市です。ここ数年はインドネシア産の宗田節も数多く輸入されています。宗田節の原魚である宗田鰹は原則的に近海で漁獲され生の状態で運ばれたものです。日本海で漁獲され、凍結の状態で産地に運ばれ節に加工される宗田鰹もありますが、脂肪分が多いので品質的には劣る宗田節です。
宗田節の「生切り」工程は頭をとり、内臓を取り出すだけです。その状態で煮熟されます。煮熟の後、そのままの状態で焙乾して作る宗田を丸宗田節と呼びます。丸宗田には骨や若干の内臓が残っています。丸宗田は通常、焙乾して製造が終了します(荒節です)。安い宗田節の薄削りや厚削りの原料になります。煮熟の後、半分に割り、骨を取り完全に内臓が取り除かれ、焙乾された節は割宗田節と呼ばれています。割宗田節は焙乾で製造が終了する「裸割宗田」(鰹で言えば荒節です)と焙乾の後、そのままカビを付けて(表面削りは行わない)製造が終了する「枯割宗田」(鰹節で言えばカビ荒です)の2種類があります。「裸割宗田」は高い宗田節の薄削りの原料となり、主に西日本で消費されています。「枯割宗田」で上質のもの(脂肪分が少ない)は、関東地区の蕎麦屋さんに販売されます。蕎麦屋さんは「枯割宗田」を自分で厚削りに削って使います。「枯割宗田」で質が劣るもの(脂肪分が多い)は、関東地区の蕎麦屋さん向けの厚削りに加工され、削ったものとして蕎麦屋さんに販売されます。一般的に言って、自分で節を削っている蕎麦屋さんの方が、厚削りを鰹節屋から買って使用している蕎麦屋さんよりも高品質の節を使っています。
1月から3月にかけて土佐近海で漁獲される宗田鰹は「寒目近(かんめじか」と呼ばれ、脂肪分が少ないので、理想的な宗田節製造の原魚となります。
宗田節は鰹節より血合部分が多いので、味、色とも濃厚なだしがでます。蕎麦屋さんは宗田節をもり蕎麦の汁に使っています。おでんや煮物等味が濃い料理にも使用されています。
3.鯖節
鯖の中でもゴマサバと呼ばれる脂肪分が少ない鯖を原魚として製造されます。皆さんが刺身で食べる鯖は節にはなりません。基本的には春先に太平洋沿岸、東シナ海沿岸で漁獲され生の状態で運ばれてきたゴマサバが原魚となりますが、近年の鯖の不漁で、ニュージーランドから凍結されて運ばれてきた鯖も鯖節に加工されています(やっぱり旨くないようです)。
鯖節も宗田節同様に「丸鯖節」と「割鯖節」があります。焙乾をして製造終了の丸鯖(裸丸鯖)は薄削りや安い厚削りに加工されます。焙乾の後、表面削りをしないでカビを付けた丸鯖は(枯丸鯖)は関東地区で厚削りにされ蕎麦屋さんが使っています。割鯖にも荒節の状態で出荷される裸割鯖とかび荒の状態で出荷される枯割鯖があります。裸割鯖は薄削りになり、枯割鯖の品質が良いものは、そのまま蕎麦屋に販売され、蕎麦屋が自分で削って使います。品質の劣ものは厚削に加工され、厚削りの状態で蕎麦屋さんが使います。この辺も宗田節と同様です。
春先に屋久島近海でとれる屋久鯖は、その脂肪分の量と質が最も鯖節に適していると言われています(梅吉と何故か呼ばれいます)。
鯖節からは香りは少ないのですが、甘味のある濃厚なだしが出ます。蕎麦屋さんは鯖節をかけそばの汁に使います。また、宗田節同様、味の濃い料理に適しています。
4.あじ節
ムロアジを原魚煮製造された節です。近海で漁獲され生の状態で産地に運ばれたムロアジが原魚です。宗田節や鯖節同様、裸丸あじ節、枯丸あじ節、裸割あじ節、枯割あじ節が作れますが、現実的には、裸丸あじ節しか製造されていないのです。
あじ節は中京地区以西でうどんのだしを中心に多く使われています。だしはやや黄色く、さば節よりもさっぱりしています。
5.いわし節
片口鰯、うるめ鰯、真鰯を原魚に製造されます。いわし節は煮熟しただけで製造が終わる煮干なんです。いわし節は薄削りの原料となり主に関西地区で消費されています。くせのない独特の甘みをもっただしがとれ、麺類、煮物、味噌汁に使用されています。
だしオフ当日にはこれらの節類と削ったものを持っていく予定です。参加される皆様には、それぞれの味わいの違いを試していただければと思います。それぞれの節類の用途は一般的な話として書いておきました。実際に飲み比べて、ご自分のお好みに応じて、使い分けをしていただければと思います。
ちなみに、私のカミサンはまぐろ本節の血合抜のだしで作る味噌汁が一番好きですし、娘は枯割宗田の削り節のだしで作る味噌汁が一番好きです。私は、赤出汁だったら、すごく濃いまぐろ本節血合抜のだしが一番好きで、普通の味噌汁なら、本節を削ったものが好きなのです。
ここからは私の個人的な意見なので、軽く読み流して頂ければ結構ですが、鰹節と珈琲や紅茶、日本茶と同じだと思うのです。ブルーマウンテンが好きな人、ブラジルが好きな人いろいろいるじゃありませんか。紅茶だって、気分や好きずきでアールグレーを使ったりダージリンを使いますよね。日本茶も煎茶、番茶、ほうじ茶等々上手に使い分けています。珈琲、紅茶、日本茶をそれぞれ使い分けるように「だし」も使い分ければ、料理のバリエーションが相当広がるとかたくなに信じております。この辺については、皆様のご意見を頂ければ幸いです。