蕎麦打ちテキスト1:TAKESANの蕎麦打ち編

 ◆こんな道具をそろえてください。

 
(1) 麺棒(3cm径×90cm長前後の丸棒なら可)*
(2) のし板(90cm×90cm程度のシナ合板で可)**
(3) こね鉢(40cm径×15cm深程度のステンレスボールで可)
(4) 麺切包丁(大き目の菜切包丁で可)
(5) 茹で鍋(寸胴など大き目の鍋)
(6) ザル

* 

丸棒はホームセンターの建築工作材料などに売っているもので十分代用できます。(1本¥900.−ぐらいから)

** 

のし板が無ければダイニングの食卓を利用します。

 ◆では食材を用意しましょう(5人前)

 
(1) 蕎麦粉−400g(食品店などの粉ではちょっと難しいです)
(2) 強力粉−100g
(3) 打ち粉−100g程度(蕎麦のはな粉)
(4) 水 −215cc〜250cc (粉と季節で変わります)

 

 

ちょっと解説 蕎麦粉について

 

 
お蕎麦を打つ時に蕎麦粉に混ぜる小麦粉は、その種類&量で味わいが随分違います。
主として、関東での蕎麦は小麦粉に強力粉が良く使われます。
のど越しの良い澱粉質の多い更科粉で打つ為、繋ぎとしてグルテンの多い強力粉が必要となる為です。
反対に関西は中力粉を使った歯ごたえの良い香り高い蕎麦が好まれます。
蕎麦の甘皮が入ったちょっと色合いの濃い蕎麦で、蕎麦独特の香りが強く中力粉を使う為、ポリっとした歯ごたえが味わえます。

小麦粉の割合いも、蕎麦粉が8に対して小麦粉が2の「二八蕎麦」といういわゆる黄金配合ともいうべき歴史上&経験上の比率があります。
蕎麦粉100%のいわゆる10割蕎麦もありますが、この蕎麦は繋ぎがない為そのまま捏ねると切れ切れになってしまい短い蕎麦にしかなりません。
そこでお湯でこねる訳ですが、この蕎麦は香りが無くなってしまう難点があります。
最終的には好みという事でしょう。

  

一般的に小麦粉の割合を増やせば打ちやすくなりますが、蕎麦の風味は薄くなり、反対に小麦粉の割合を減らせば難しくなりますが、蕎麦の風味は豊かになります。

その理想的な配合が、小麦粉2に蕎麦粉8のいわゆる二八蕎麦となります。

 

 

 ◆はじめる前に

 

  • 始めに大きな鍋になるべくたくさんの湯を用意しておいて下さい。
  • 蕎麦を打つ場所は、風の通り道を避けてエアコンなどの風が当たらない場所を選んで、蕎麦の表面が乾燥しない様に心がけて下さい。
     

 

 ◆第一段階 水回し

 

  1. 捏ね鉢(ボール)に、蕎麦粉と強力粉を合わせてふるいにかけます。
  2. 計量した水(粉全体の43〜50%)の半分程度を輪を書くように粉全体にかけます。(水の量は季節&粉の新旧で変わります)
  3. 両手の指を熊手の様に各々立てて、粉全体にまんべんなく水が行き渡る様に散らしながらまぶしていきます。(この作業を水廻しと言います)
  4. 残りの水のまた半分を最初と同じ様に粉全体にかけます。
    粉全体がぼろぼろに湿ってきますので、両手で軽く擦りあわせる様に揉みながら粉全体が同じ状態になるように続けます。
  5. 残りの水を注意深く入れます。この時粉全体がべとべと状態になっている様だと水が多すぎますので、控えて下さい。
  6. 粉同士が少しづつ大きな固まりになっていきますが、急いで固めようとはせず、熊手様の指でほぐすように散らし続けます。
  7. 水廻し作業の終わり頃から、ぼろぼろと大きな固まりになってきますので粉同士を押し付ける様にして大きな固まりにまとめてゆき、最終的に一つの固まりにします。
  8. 本格的なこねに入る前に、鉢の中或いは両手にこびりついた蕎麦はきれいに取り除きます。(手は洗って下さい)

     

 

 ◆第二段階 捏ね(こね)

 

  1. ぶつぶつ状態ながらもひとつの固まりになったもの(「どう」と呼びます)を鉢の中で両手の中に包み込んで、向う側の下から中央部分へ練り込んでいきます。 少しづつ廻しながらこの作業を繰り返していくと、周囲から中央部へ折りしわが付きます。ちょうど菊の模様に似てきますので、この練り方を菊練りと呼びます。(陶芸の土練りに極似しています。)
  2. この作業を続けて行くうちに、蕎麦の肌は最初の荒いぶつぶつの状態から極めの細かいしっとりとした肌に変わっていきます。
  3. この時点で鉢から「どう」を出して、今度はのし台の上で作業を続けます。このタイミングで「どう」の保水状態を調整します。鉢の中では水分量は保たれますが、のし板は蕎麦の水分を吸湿しますので、練れば練る程乾燥していきます。
  4. 大体5分ぐらい続けて、「どう」がしっとりと落ち着いた時点で、今度は上面の折りしわの部分を内へ内へと少しづつすぼめていって、全体の形を三角錐に形作っていきます。(これも「どう」と呼びます)
  5. 折りしわが丁度「へそ」のような形になったら、それを下にしてのし台に置きます。

     

 

 ◆第三段階 伸し(のし)

 

  1. のし台に打ち粉を30cm程度の円に振り広げます。
  2. その真ん中に「どう」を置き、上から掌を使って2cmぐらいの厚さになる様に丸く平たく廻しながら押さえて伸ばします。
  3. 下に打ち粉を振って「どう」を裏返し、円形を整えていきます。
  4. ほぼ30cmぐらいの円になったら、麺棒で円の中央から向こう端1cm手前までゆっくり軽く押して、その都度廻しながら伸していきます。
  5. 円の周囲を同様にして少しづつ廻しながら繰り返し伸ばしていきます。

 

 

 ◆第四段階 角出し(四つ出し)

 

  1. 5mmぐらいの厚さの円になったら、表面に打ち粉を散らして今度は手前から麺棒に巻き込みます。
  2. 手前から向こう側へ巻き込んだ蕎麦の表面を軽く押さえるように、麺棒を押していきます。2〜3度繰り返した後麺棒を左右入れ替えて、のし台に打ち粉をして後、蕎麦を手前から広げます。今度はまた手前から麺棒に巻き込み、繰り返し作業を続けます。
  3. (2)の作業を2〜3度繰り返した後、今度は蕎麦を巻き込んだ麺棒をのし台の右辺に置き、左側に蕎麦を広げます。
  4. 横の菱形に伸びた蕎麦を今度も手前から麺棒に巻き込み、(2)の作業を打ち粉を施しながら繰り返していきます。
  5. 再度(3)の作業をして、蕎麦の形が厚さ2mm程度の縦正方形になれば手前から巻き込んだ麺棒を今度はのし台の右手前隅に45度で置きます。そこから左上に静かに広げていくと、正方形に近い蕎麦が出来ます。

 

 

 ◆第五段階 本伸し

 

  1. 正方形になった蕎麦を手前から麺棒で巻き込み、のし台に打ち粉をします。
  2. その状態で、手前から向こう側へ軽く押し伸ばします。
  3. 蕎麦を広げた状態で、まずのし台の真ん中の蕎麦を軽く静かに伸します。次に一番向こう側の蕎麦を伸します。
  4. 一旦蕎麦を手前から麺棒に巻き込んで、左右入れ替えて上下入れ替え蕎麦を広げ、再度広げて(3)を繰り返します。
  5. この作業では麺棒が2本あれば、蕎麦を広げたまま放置する時間が少なく乾燥を防げます。
  6. 最終的に蕎麦は幅が50〜55cm、長さが80〜85cmになります。

 

 

 ◆第六段階 畳み

 

  1. 横55cm、縦85cm程度に広がった蕎麦の上半分に打ち粉をします。
  2. 手前の蕎麦の端を麺棒にのせて、静かに上半分にかぶせていきます。
  3. 半分になった蕎麦の左半分に打ち粉を施して、今度は右側の蕎麦を麺棒にのせて左側にかぶせていきます。
  4. 今度は再度上半分に打ち粉を施し、手前から向こう側にかぶせます。

 

 

 ◆第七段階 蕎麦切り

 

  1. まな板に打ち粉を施します。畳んだ蕎麦の一番太く重なった辺を手前に置き同じく二重に重ねた辺を右側にして静かに置きます。
  2. 蕎麦の上にふんだんに打ち粉を施します。
  3. 包丁で手前から向こう側へ心持ち押すような気持ちで上から押し切ります。
  4. 切る巾は大体2mmぐらいが見当です。
  5. 一束4〜5cm巾の切った蕎麦をその都度まとめておきます。
     

 

注記:

通常、蕎麦切りは蕎麦包丁と駒板を使って切っていきますが、本格的な道具でもあり普通の家庭ではありませんので、刃巾&刃渡りのある文化包丁を使います。

 

 ◆第八段階 茹で

 

  1. 最初に用意しておいた湯の沸きあがりを確認しておき、少し沸き上がりの程度を押さえてから、優しく静かに蕎麦をほぐしながら振り入れます。
  2. 大体二束程度づつ茹でます。
  3. 最初、蕎麦は沈んでいますが、しばらくして全体に浮かんできます。
  4. 蕎麦が浮かんできてから、10秒から15秒で湯から上げます。

 

 

 ◆第九段階 洗い

 

  1. 茹であがった蕎麦をボールの冷たい溜め水で優しく両手を合わせるようにほぐしながら洗い、打ち粉のぬめりを取ります。
  2. 洗った蕎麦は食べやすい量に取り上げながら笊にあげていきます。

 

 

 ◆美味しく食べるには

 

蕎麦は鉢の温かい汁で頂く食べ方と、笊に盛って蕎麦つゆにつけて頂く食べ方がありますが蕎麦の風味を楽しむには、いわゆる盛り蕎麦が向いています。
この盛り蕎麦に欠かせないのが、蕎麦つゆの味になります。
通常、蕎麦つゆは濃口醤油と氷砂糖、本味醂を使った「返し」と鰹出汁を合わせて作ります。
薬味に刻み葱や山葵を使いますが、やはり最初は蕎麦の風味を楽しむ為に、蕎麦をそのまま少し頂いてから後、お好みの薬味を加え蕎麦つゆで頂くのも結構ではないかと思います。

 

←戻る   あひるさんのテキストを見る→ 

テキストと解説:TAKESAN
写真協力:龍