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 ◆ 分割・成形
 

  


この配合でシュトーレンを仕込みますと分割時点での生地総重量が粉の重量の約2.8倍になっています。例えば500gの小麦粉を使って仕込んだとしますと1.4Kgの生地が出来上がることになります。

分割重量は皆さんのオーブンレンジの性能等に依存し、私の方から***g分割と提示するのはちょっと難しいです。

それぞれで、分割重量を決定されるときの注意点として、仮に粉500gで生地重量1.4Kg、分割重量が300gとします。

これでいくとシュトーレンが約4個取れるわけですが、この大きさのシュトーレンを4つ一度に焼けるかどうか各自の環境に合わせて考えていただきたいのです。シュトーレンは焼成時間が40〜50分かかりますので、一度に入りきらない場合は2回目に焼く分が過発酵になってしまうこともあります。

仕込量、分割重量、オーブンレンジの能力を考慮に入れて決定していって下さい。

(1)分割・丸め

  1. 分割重量は前述の如く皆さんの環境に合わせて決定して下さい。
  2. 分割するときには出来るだけ生地を小さく切り刻まないで下さい。
  3. 丸めは生地表面に出来るだけフルーツを出さないように注意して、軽く丸めて下さい。強く丸めて締めていくとフルーツが生地の表面にでてきます。(←フルーツが生地表面にでた物をそのまま成形、焼成しますと出たフルーツが焦げて炭になり苦くなるだけですから)
  4. 約30分ベンチタイムをとります。
  5. ベンチ終了後軽くガス抜きをして、一旦「なまこ型」に成形し、再びベンチタイム10分とります。

    分割して軽く丸めたらベンチタイムを30分とる   一旦なまこ型に成形し、再びベンチタイムを10分とる

(2)成形

下図を参照しながら説明を進めていきます。

  1. 「なまこ型」にして、10分のベンチ終了後、ガス抜きをせずに(A)に麺棒をあて押さえます。
  2. (B)の部分に麺棒をあて(C)の部分まで伸していきます。(そんなに薄く延ばさないようにして下さい)
  3. 延ばしたら(C)の部分を(A)に折り返します。
  4. 折り返した新(A)の部分に麺棒をあて軽く押さえます。
Aに麺棒を当てて押さえる   Bの部分に麺棒を当てCの部分まで押していく工程   伸ばしたらCの部分をAに折り返す

 
成形した表面に出てしまったレーズンは取っておき、最後の成形の時にでも中に入れ込んでしまうとよい。   表面に出てしまったレーズンを取り除いた成形後の生地


↑シュトーレン型に
成形した生地→

 

 

  

  
 ◆ ホイロ(仕上げ発酵)、焼成
 

 

 

(1)ホイロ

  ホイロ温度・・・・約30゜
  ホイロ時間・・・・15分〜20分

ホイロは通常のパンの感覚で発酵させますと大失敗します。

ホイロを取りすぎると、折り返して重ね合わせた部分がはずれてしまい、焼成すると「わらじ」のような不細工な代物になってしまいます。

(2)焼成

皆さんのお持ちのオーブンレンジによって焼成温度、焼成時間は異なってきますが、概ね下記のような感じでじっくり焼き込んで下さい。

  焼成温度・・・・・150〜160゜
  焼成時間・・・・・40〜50分

(3)焼成後の仕上げ

シュトーレンを焼成中に溶かしバターを準備して下さい。

焼成後直ちに溶かしバターを全体にたっぷり塗り、砂糖をまぶします。*

 

焼成後、溶かしバターを塗ったもの
 
砂糖をまぶして完成

熱が取れるまで室温で放置し、その後ラップ等で覆い保存します。

この状態で約3日間おきますと、シュトーレンの味が馴染みだし、しっとりとした食感になってきます。

*注砂糖は粉糖1にグラニュー糖1の割合で混ぜた物
 

レシピ/BAECKER

 

 

 
 ◆ シュトーレン作りを理解するための、もう少し詳しい技術説明
 

 

 

まず、今回させていただいたシュトーレンの技術的な補足を。

  1.前生地の発酵不足
  2.生地の硬さ

前生地の発酵不足についてですが、テキストにも書いていますように前生地の発酵終了時点では、発酵のピークが過ぎ生地自体がドロップダウンするぐらいの感じになります。この理由の1つに、発酵中生地が冷え、結果生地が未熟成になってしまったようです。

発酵器があればその温度を調整することで防ぐことは出来ますが、殆どの皆さんは発酵器を持ってられないように思います。発泡スチロールの箱に30゜前後のお湯を入れ、そこにボールに入れた生地を浮かべて発酵さすなど各自の環境で工夫してみて下さい。

また、冬場のこの時期ですと捏上げ温度、発酵温度が適温であっても回りの寒さの為、生地が冷え込んでしまう場合もあります。かえってこの時期ですと前生地の捏上げ温度24゜を1〜2゜持ち上げて25〜26゜で捏ね上げた方がよいかも知れません。

発酵不足と話しが絡んでくるのですが、生地が少し硬かったのではないかと思います。使う粉の銘柄、蛋白量によって異なってきますが前生地の牛乳の量を3%前後増やしてもいいような気がします。

ただ、生地が柔らかくなると若干発酵が早く進むことがありますのでご注意下さい。

 ★発酵温度等、シュトーレンに関して

まず、テキストでアップさせていただいた行程条件(発酵条件)に関することです。

あそこでアップさせていただいた条件はあくまで「理想的な」条件なんですですからそんなにシビアに考えなくても良いように思われます。

ただ設定条件が変わってきますと、当然の事ながら発酵時間も変わってきます。CHIKOTAN のオーブンレンジの詳細が分かりかねますので詳しくコメントすることが出来ませんが、概ね次の2点を押さえて下さい。

1.前生地の発酵

発酵のピークが過ぎ、生地がドロップダウンするまで発酵させて下さい。

2.成形後のホイロ(仕上げ発酵)

成形した合わせ目の部分が微かに離れだすぐらいまで発酵させて下さい。この時発酵が過ぎると、合わせ目の部分が完全に離れ、焼成すると「わらじ」のような代物になってしまいます。

次にドイツでの各店毎の味の違いなんですが、同じ種類のシュトーレンを比較するならばさほど差異はないように思います。

私がシュトーレンに本格的に接したのは今から7年前でした。最初に教わったものから、基本的に配合は変えていませんが製法上細部に当たっての変更修正を5年ぐらい続けてきました。そう言った意味では皆さんに紹介させていただいたシュトーレンは「BAECKER流(風)」シュトーレンかも知れません。(味に関してはオリジナルと差はないと思いますが、食感の部分でかなり異なっていると思います。)

今回(1994/1/8に開催された料理フォーラムのクッキング・オフ“第2回「ベッカ里〜な土曜日」シュトーレン編”)やっこさん、里和さん、さわるさん、cannelleさんのシュトーレンを食べ比べてつくづく思いました。確かに「これがシュトーレンの基本配合・製法で・・・」って感じのシュトーレンもいいのですが、「10人十色のシュトーレン」でいいんじゃないかと思います。

改良した方がいいのではないかという点に関して、当日コメントさせていただきましたが、更に改良を重ねられて「***流(風)シュトーレン」の完成をお待ちしています。

私は「家庭の団欒の中のシュトーレン」と言うコンセプトでシュトーレンを焼き続けてきました。今回紹介させていただいたシュトーレンも皆さんの「作ることの喜び」、また、家庭の団欒の中何か会話が生まれてくる・・・そう言った存在になれば嬉しく思います。

 

 

 

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このシュトーレン作りのテキストは、1994/1/8に開催された料理フォーラムのクッキング・オフ“第2回「ベッカ里〜な土曜日」シュトーレン編”に提供された、ドイツで修業された匠であるBAECKERさんのレシピを中心に再構成致しました。
(レシピ再現・写真:松尾康子)